医療を超えた組織論の話「これからの切迫早産管理」

 

紹介文

中外医学社ホームページより

中外医学社 | 書籍詳細

切迫早産管理が180度変わるほんとうのEBMをお伝えします

切迫早産に入院安静臥床や持続点滴投与はいらない!
日本で当たり前のように行われているリトドリン塩酸塩の持続投与は欧米ではありえません.妊婦さんにとっては不必要で,場合によっては有害な治療です.妊婦のQOLが上がり,外来でみることができるほんとうのEBMをわかりやすくまとめた,これからの切迫早産標準治療を示す1冊.

対象はこんな人

産科領域に興味がある人

根拠に基づいて周囲の慣習を変えていきたい人

目次

  1. 切迫早産とはどういった病気か
  2. リトドリン塩酸塩の歴史と現状
  3. エビデンスはどうなっているだろう
  4. これまでの経験とめざすべき治療の実際
  5. リトドリン長期投与をやめるためのステップ
  6. ひとを変える、組織を変える
  7. 医療倫理の観点から
  8. 切迫早産について最後にもう一度考える

感想

著者の室月淳先生はリトドリンの長期投与に関して以前から問題提起されてきた先生です。

日本では切迫早産といえばリトドリンと安静。

マンガ「コウノドリ」でも切迫早産で長期入院を余儀なくされる妊婦の話がありました。

入院中はトイレすらベッドの上でするように指示された、という話を私の周囲でも聞いたことがあります。

切迫早産のケアが欧米と大きく違うということが薬剤師の間でも広く知られるようになったのは、

2013年の欧州医薬品庁(EMA)の勧告ではなかったでしょうか。

「経口剤は承認取り消し」「注射剤は最大48時間」という勧告を日本での現状と比較して驚かれた方も多いと思います。

私も驚いた一人です。

2013年10月の医薬品安全性情報Vol.11,No.21へのリンクを貼っておきます。

https://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly11/21131010.pdf

それに対して、ウテメリン販売元のキッセイ薬品とPMDAの調整結果が2014年に出ました。

結果は、「今まで通り」。

なんで?と思いました。

メーカーの案内文書も出ましたが、イマイチ納得できない。

https://med.kissei.co.jp/vcms_lf/re247001.pdf

ただ、日本では延々と出産直前まで投与され続ける状況があり、

いきなり48時間以内にしろと言われても「投与中止して産まれちゃったらどうしてくれる!」という声があがることは容易に想像ができます。

こういうときに産科ガイドラインとかががっつり書いてくれると意識も変わりやすいかと思うのですが、

どうにもマイルドな記載です。

長くなりましたが、そんな状況の中、勧告が出る前からずっと声を上げ続けていたのが室月先生です。

Twitter(X)でずっと活動を拝見していました。

実際、投与中止しちゃってその後の管理はどうするのか、

リトドリン長期投与が当たり前の環境を一人でどう変えていったのか。

そのあたりがずっと気になっていましたが、それにこたえてくれたのがこの本です。

前半はリトドリンや安静のエビデンス

後半はどうやってリトドリンを組織として中止していくかが述べられています。

なかでも秀逸なのはChapter6の「ひとを変える、組織を変える」。

これまでよかれと思って行ってきた治療がエビデンスが無いと伝えたところで、

それを受け入れてもらうことはできるのか。

どうやって受け入れてもらい、行動を変えていくのか。

これはただの産科医療にとどまる内容ではなく、

医療におけるチームビルディングの内容です。

産科に縁がない方でも、この章だけは読んでほしい。

そう思わせてくれる内容でした。

よければこちらもどうぞ

医療における組織づくりの良書

魔除けになる?「泣く子も黙る感染対策」 - 薬剤師がマインドマップ風に読んでみた

残り40年どう生きる?「ワーママはるのライフシフト習慣術」

 

本のそでから

変化が激しい時代、

社会の荒波で溺れぬように、

ワーママ的泳ぎ方を

徹底解説します。

対象はこんな人

人生戦略に迷っているけど、

どこから手をつけたらよいかわからない人

目次

第1章「仕事」の習慣

第2章「人間関係」の習慣

第3章「子育て」の習慣

第4章「お金」の習慣

第5章「学び」の習慣

感想

私は現時点では40代の会社員です。

定年まで無事に勤められればいいですが、

来年には会社が無くなっているかもしれない。

数か月後にプロジェクト終了でクビを言い渡されるかもしれない。

おくすり業界といえど、昨今はかなり不安定であり

上記のような内容が他人事でなくなっている*1のを肌で感じています。

 

そのような環境で、子どもをもつ親として、妻として、

そして薬剤師免許をもって働く社会人として、

人生80年と考えて残りの約40年間、どのような人生戦略をとればよいのか。

親の私も、妻の私も、社会人の私もどれも大切にしながら、

人生のハンドルを自分で握るにはどうしたらよいのか。

そんなことを考えながら読みました。

 

この本では5つの章に分けて、著者の言葉を借りれば

「『自分の人生』を主体的に過ごす『知恵』として使える習慣」が記載されています。

それぞれの章で、私の印象に強く残った箇所を紹介していきたいと思います。

第1章「仕事」の習慣

仕事は「ライフワーク」と「ライスワーク」に分けられる

「ライフワーク」と「ライスワーク」の交差点を探すキャリア形成に意識を持っていく

 

「ライフワーク」とは「自分の好きなこと、やりたいこと、楽しいこと」で構成された仕事。

「ライスワーク」は「お金を稼ぐため」の仕事。

今まで、仕事のことをこういう観点で見たことはありませんでした。

ライフだけでは生活はできないけれど、

ライフとライスがうまく組み合わせられるようなワークであれば続けられるというのは腑に落ちました。

 

第2章「人間関係」の習慣

夫婦仲を良くするためのコツは可処分時間の公平性である

可処分時間とは自由時間のこと。

言うまでもなく、子どもと過ごしている時間は可処分時間ではない。

だって1人の自由な時間ではないから。

私がこれだ!と思ったのは、「可処分時間には残業も含まれる」こと。

私は保育園のお迎えに間に合わせないといけないから、

残業もできず周りに頭を下げながら泣く泣く退勤してるのに、

夫はその点で泣くことはないよね?と不満を持っていました。

もちろん夫だって、できるだけ残業しないようにしてくれているのは知っています。

ただ、残業という選択肢がそもそもあるのかないのか。

この点のすり合わせが、我が家には欠けていました。

 

第3章「子育て」の習慣

いつの間にか子どもの「召使い」のような関係性を無意識に選択した親になってしまう

仕事では、言われたことをやるだけじゃダメですよね。

相手の意向を言われずとも読み取って、不測の事態に備えて、

場合によっては同僚のフォローまで先回りして考えている。

それはあくまで職場で求められる動き方であって、

子育てでそれをしたら依存関係を作ってしまう。

まずい、私まさに召使いのような関係性になっています。

まだ間に合うだろうか。

 

第4章「お金」の習慣

「共働きの継続」は、夫婦がお互いのやりたいことの「応援手段」になる

共働きはお互いに何かあったときのリスクヘッジになる、という観点は持っていたのですが、

「やりたいことの応援手段」という意識はありませんでした。

リスクヘッジも大切だけど、応援手段と考えるとより前向きにとらえられそうです。

 

第5章「学び」の習慣

学ぶために必要な3つの条件

①健康状態が安定している

②自発的に学びたい気力が湧く

③時間が確保できる

 

育休中にスキルアップなんて無理!と思ったのは、

この3つの条件が満たされてないからですね。

子どもが大きくなって条件が満たされつつある今、

「学び」のチャンスだなと考えています。

 

以上、各章からそれぞれ最も印象に残った箇所を抜き出しました。

人生80年と考えると半分が過ぎたところで、

これからの人生をどうやってドライブしていくかをじっくり考えるきっかけになった、

重要な本だったと思います。

自分のハンドルは自分で握る!(byブンブンジャー)

具体的に行動に起こせたら、またこの場でもご報告したいなと考えています。

 

著者の尾石晴さんのVoicy「学びの引き出しはるラジオ」もおもしろいのでおすすめ。

尾石晴 / ポスパム「学びの引き出しはるラジオ」/ Voicy - 音声プラットフォーム

*1:各社人員削減してるし…外資は撤退するし…

広げて深めていこう!「読んだら忘れない読書術」

 

本のそでから

もう、「読んだつもり」にはならない。

対象はこんな人

本を読みたいけど読めてない人。

どんな本を読んだらいいかわからない人。

目次

第1章 なぜ、読書は必要なのか?読書によって得られる8つのこと

第2章 「読んだら忘れない」精神科医の読書術 3つの基本

第3章 「読んだら忘れない」精神科医の読書術 2つのキーワード

第4章 「読んだら忘れない」精神科医の読書術 超実践編

第5章 「読んだら忘れない」精神科医の本の選択術

第6章 早く、安く、たくさん読める究極の電子書籍読書術

第7章 「読んだら忘れない」精神科医の本の買い方

第8章 精神科医がお勧めする珠玉の31冊

感想

精神科医・樺沢紫苑氏の2015年の本です。

普段本を読まない人向けに、大きく三本の柱で解説されています。

  1. なぜwebで簡単に調べられる時代にあえて読書が必要なのか?
  2. ではどうやって本を読んだらいいのか?
  3. そもそも本ってどうやって選んだらよいのか?

 

「なぜ読書が必要か」では読書によって得られることを8つ説明されています。

「脳を活性化」や「自己成長」などが紹介されているのですが、

8つの「得られること」の中で、私が認識していなかったのは「健康」。

本を読めば、ストレスと不安から解放される

樺沢氏は、「人間の悩み事というのはほとんど全て既刊の本に書かれている」

「読書家は問題に直面しても本を参考にして早期のうちに解決してしまう」

と説きます。

ただ一方で、次のようなことも言っています。

悩みの渦中にいる人は問題解決のために本を読もうとしない、

その大きな理由は「それどころ」ではないから。

普段から本を買う習慣、本を読む習慣のない人が、病気になり切羽詰まった状態で本を読めるはずがない。

トラブルに直面した時、解決手段を複数持っておく、解決手段があることを知っているというだけで精神は落ち着きを取り戻せます。

この観点はさすが精神科医だなと感じました。

 

また読書のメリットとしてもう1つ、

私自身が普段から感じていたことを言語化してくれた!と感じた箇所があります。

本の中では「仕事力~『料理の鉄人理論』」として紹介されています。

 

料理の鉄人」(懐かしい!)で、なぜ鉄人たちは60分で素晴らしい料理が作れるのか。

それは料理人の腕に加えて、会場である「キッチンスタジアム」に必要な材料が準備できているから。

食料の買い出しから始めてたら60分では間に合いませんよね。

普段からの読書で、自分の頭の中に「キッチンスタジアム」を準備しておく。

すなわち、材料である知識や情報は頭の中で整理して並べられている状態を作っておく。

 

私は以前から頭の中の「引き出し」を多く持ちたい、という意識を持っていました。

何かに遭遇したときに、

「どこかで聞いたことあるな?このあたりの引き出しかな?」という感触をつかんでおきたい。

「あの人に聞けば何かしらヒントがある」と言われたい。

それを言語化してくれたのが、この本の「仕事力」という項目でした。

問い合わせを受けたときに、0から調べるのと、

だいたい資料の当たりがついてるのでは回答までに要する時間が大きく変わります。

迅速な回答ができること。+αの情報提供ができること。

それが本を読んで得られる「仕事力」なのだと思います。

 

「どうやって本を読んだら」はこの本を読んでもらったほうがよいと思うので

あえてここでは触れません。

 

最後の、「どうやって本を選んだら」の項で

私が印象に残った箇所をご紹介します。

「本を選ぶ際に大切にしている『基準』」として、4つ紹介されているうちの1つです。

広く、深く、バランス良く読む~「温泉採掘読書術」

「広げる読書」ばかりしていると雑学王のように幅広くいろいろなことを知ることはできますが、いつまでたっても何かの専門家にはなれません。

一方で、「深める読書」ばかりをしていると、自分の専門領域については圧倒的な知識を持っているものの、それ以外の領域は全く知らない「専門バカ」になってしまいます。

「広げる読書」と「深める読書」、そのバランスが重要なのです。

私はどちらかというと「広げる読書」の割合が多めです。

薬剤師という職業がそういう傾向がないでしょうか。

ジェネラリストでありつつ、スペシャリストも求められる。

その中で「広げる」「深める」のバランスが重要ということに深く納得しました。

このブログで紹介している本も多分野にわたっています。

ただ「薬学」という大きな根っこでつながっているので、

表面上関係のなさそうな事柄が急にスイカゲームが連鎖するときのように

ぽぽぽぽぽん!と繋がってくることがしばしばあるのが

おもしろいところだと感じています。

 

個人的には「精神科医の本の買い方」の章がおもしろかったです。

年間の図書予算を先に確保しちゃおう、というやり方です。

何円に設定したものか…

 

「本を読んだほうがいいのは分かってるんだけどね」という方、

だまされたと思ってこの本を読んでみてくださいね。

2024年7月発売の薬剤師関係の雑誌

さて、2024年7月発売の雑誌をみていきましょう!

月刊薬事

7月号は「治療効果を維持するためにどう動く? 第一選択薬がないときの次の一手」 

薬局

7月号の特集は「Hey 薬剤師外来「外来診療の質を上げる方法を教えて」」

南山堂 / 月刊誌「薬局」

調剤と情報

7月号の特集は「粉砕可否にどう影響? 製剤上の工夫と粉砕を考える」 

 

調剤と情報|株式会社 じほう

治療

7月号の特集は「皮膚外用薬を使いこなす!」

南山堂 / 月刊誌「治療」

見どころ

7月はどの特集も気になる!

「月刊薬事」は「こんなときどうする?○○がない場合の次の一手」と称して、

経口ペニシリンがないとき、プラチナ系抗がん薬がないとき、経口ステロイドがないとき…

と各薬剤群で記事になってます。

というか、あれもないこれもない、って日本は本当に先進国なのか。

 

「薬局」はがん化学療法の薬剤師外来がメインですね。

なんと攻めた表紙だ。

南山堂は思ったよりお堅くない会社なのかもしれない。

 

「調剤と情報」はご存じ倉田なおみ先生が「製剤上の工夫を知る」という記事を書いてます。

具体的な製品名が以下のように記載されてます。

あまり接点のない薬もあるな…?

タケプロン®OD錠(ランソプラゾールOD錠)、ティーエスワン®配合顆粒/配合OD錠、ジエノゲストOD錠「トーワ」、アダラート®CR錠、エンテカビルOD錠「サワイ」、レベチラセタム粒状錠「サワイ」、エスシタロプラムOD錠「サワイ」、ムルプレタ®錠、ベシケア®OD錠〕

 

「治療」は個人的に一番気になってます。

謎多き皮膚科の世界。

前書きにはこんな言葉が。

執筆陣は,外用薬を自家薬籠中のものとして日々使いこなしている皮膚科医です.

なかなかガイドラインや本の通りにはいかないのですけどね。

 

暑すぎるから涼しい部屋で雑誌でも読みましょう!

 

薬というより天然物化学寄りの「薬のギモン早わかり帖」

 

「はじめに」より引用

この本を通じて、新型コロナウイルスのような古くて新しい感染症とつき合っていくための方法を一緒に考えていくことができれば幸いです。

対象はこんな人

一般市民向けの本ではありますが

一般市民ではなく、天然物化学好きな薬剤師におすすめ

目次

  • 第1章 知っておきたい薬の基本
  • 第2章 感染症と薬のたたかい
  • 第3章 薬と成分 

感想

この本の発行は2020年10月。

コロナ禍の前から出版の話はあったのだと思いますが、

第2章の感染症関連にはだいぶ力が入っています。

 

さて、第1章から読んでいくわけですが、なんだか違和感があります。

一般向けの本って、薬剤師の立場から見ると

「うんうん、知ってるよ」というものが多いはず、

というか全部知ってなければ困るわけですが、

1ページ目からいきなり知らない言葉が出てきます。

「グラヤノトキシン」ってご存じですか…?

アセビレンゲツツジに含まれる強心配糖体だそうです。知らなかった。

薬は毒にもなる、という説明で例に出されているのですが、

薬剤師がこの話題でよく例に挙げるのはジギタリスではないでしょうか。

 

読み進めていくと、どうも植物関係の話で深く説明している箇所が多い。

アレロパシー」って言葉の解説とか「植物がカフェインをつくる理由」とか、

天然物化学関係の説明が至る箇所にあります。

というのもこの本の著者は農学部にルーツのある方のようです。

一般向けの本と侮ることなかれ、

薬剤師であっても薬に関係する植物・天然物関係の知識を深めたい方におすすめです。

センブリの苦み成分とその胃腸への作用機序なんてなかなか調べる機会ないですよ!

 

一方で、薬にかかわる一般的な知識に関してはちょっと危うい印象を受けます。

例えば相互作用の説明の項。

牛乳で飲んではいけない薬がある、というところまではいいんです。

高血圧の薬のうち、「カルシウム拮抗薬」、「スタチン系」と呼ばれる高コレステロール血症の薬を牛乳といっしょに飲むと、体内濃度が上がって副作用が現れることがあります。

ん…?

CCBやスタチンで牛乳と相互作用があるやつって何かありましたっけ…

そこはあの抗菌薬を挙げてほしかった。

 

第3章では実際に薬の商品名・一般名をあげて各疾患の薬を説明しているのですが、

ここでも薬剤師の認識とは若干のずれがある気がします。

 

たとえば「腸の薬」として、

植物性便秘治療薬、合成便秘治療薬、活性生菌製剤、正露丸、陀羅尼助・百草が見出しに挙げられています。

そもそも便秘治療薬に関して

「植物性」「合成」という分類はあまりしないと思うのですが、

それと同列に正露丸や陀羅尼助がならんでいることに違和感があります。

医療用の薬の説明をしてるのかOTCも含めてなのかどっちなんですか。

そもそも正露丸をここで取り上げることに(以下自粛)

 

抗生物質」という項もあるのですが、

記載されているのがクラリス錠、塩酸バンコマイシン散、フロモックス錠、

アクロマイシンVカプセル、イスコチン錠、リファジンカプセル、サイクロセリンカプセル

の7種類。(順番もこのまま)

いやー…一般向け書籍で取り上げる抗菌薬としてはマニアックすぎませんかね。

 

2020年発行の本なのに、

免疫抑制剤の代表例として「サンディミュンカプセル」*1の記載もあったりと、

いろいろこの章は突っ込みどころがたくさんです。

 

個人的には液剤や点眼剤は冷蔵庫に入れるのが望ましい、と言い切ってしまうのも、

ちょっと待って!説明書みて!と言いたくなります。

 

一般向け書籍ではありますが、

くすりを知りたいときの最初の1冊としてはおすすめはできません。

植物関係のネタはとても豊富で読み応えがあります。

なので、薬剤師が天然物がらみのネタを仕入れたいときにおすすめです。

この本の著者は植物関係のおもしろそうな本を出しているので、

そちらを読んでみようと思います。

 

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天然物化学・薬用植物学関連で3点。

なぜ学校でジャガイモ食中毒が起こるのか?「植物はなぜ毒があるのか」 - 薬剤師がマインドマップ風に読んでみた

薬剤師は魔女なのか?「禁断の毒草事典」 - 薬剤師がマインドマップ風に読んでみた

こんな授業を受けてみたかった「禁断の植物園」 - 薬剤師がマインドマップ風に読んでみた

*1:サンディミュンカプセルは2017年に販売中止が案内されている

漢方娘って何だ?「三代目薬屋久兵衛」

 

あらすじ

漢方娘×薬草園男子の恋。すこしフシギな町が舞台の、かわいい恋の物語。

「初恋を信じていたい。でも、出会ってしまった。」

2ヵ月前に地元に戻ってきた25歳の三久(みく)は、

祖父の漢方薬局「薬屋久兵衛(くすりやきゅうべえ)」を継ぐために修行中!

店を訪れるお客さんの体と心のお悩みに、時に漢方で、

時にはおしゃべりで、祖父とともに応える毎日。

その一方で、初恋を忘れられずにいる三久だったが、

植物好きの超人見知り青年・カナエに出会って彼のことが少しずつ気になり始め――?

本格漢方×大人の純情ラブ、開幕!

出典:祥伝社ホームページ

対象はこんな人

少女漫画を読むのに抵抗がない人。

「初恋」とか「運命」とかそういうキーワードを甘酸っぱい思いで見られる人。

感想

このブログでは初めて、マンガのレビューです。

漢方薬局が舞台でカナエくんは薬剤師免許を持ってる大学院生ではあるのですが、

そんなに薬がからむわけではないです(笑)

あくまで漢方・植物園モチーフの漫画なだけ。

 

それでも!「薬屋久兵衛」の生薬標本が並ぶ棚だったり、

背景に百味箪笥がある様子なんかはまさに漢方薬局。

おじいちゃん(現・店主)が脈診や舌を見る様子なんかはいかにも熟練の漢方相談、

という描き方がされています。

この連載が始まった2014年は登録販売者の受験にはまだ実務経験が必要で、

薬剤師免許を持っていない主人公の三久は実務経験を積んでいる最中、という設定です。*1

しかし実務経験とは神農さまや白澤を磨くだけでいいのか…(主人公も作中で言ってる)

 

登場人物がみんな個性的かつ魅力的で、

話の展開が早くて気持ちよく進んでどんどん読めちゃいます。

薬剤師の観点からは上述の漢方薬局の描写以外にも、

重要なキャラクターの「魔女」の薬草園がとても素敵なんです。

読んでると久しぶりに薬用植物園とかハーブ園とか行きたくなっちゃう。

作者のねむようこさんの描く植物の絵が怪しくて魅力的です。

2017年に完結してるので、一気読みもできますよ。

 

ねむようこさんの本は「午前3時の無法地帯」も大好きです。

薬は関係ないですけどね。

 

よければこちらもどうぞ

  • 「薬剤師,薬学の登場するマンガ,コミックの歴史」薬史学雑誌 55(2),241-244(2020)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjhp/55/2/55_241/_pdf

薬史学雑誌って普段あまりなじみがない雑誌だけど、これはすごい。

薬屋のひとりごと」から「薬師アルジャン」、「のらくろ」までカバーされてます。

これに載ってないのは今回取り上げた「三代目薬屋久兵衛」と「処方箋上のアリア」くらい?

 

魔女の薬草園つながりでいかがでしょうか。

 

*1:2015年4月1日以降は学歴と実務経験不要、合格後に実務経験が必要

誰におすすめ?「ビーカーくんのゆかいな化学実験」

 

本の「そで」から引用

この本は、実験器具たちが案内してくれる化学実験の本です。

学校の理科室で見たことのある楽しい実験や、

研究室で味わったドキドキハラハラな実験が盛りだくさん。

懐かしいと感じる方も、今まさに取り組んでいる方も、

ぜひ読んでみてください。

 

対象はこんな人

「そで」の文章から考えると化学実験まっただなか、もしくは卒業生対象なのか?

ガチで化学実験の最中の人は読まないと思うので、

私のような化学実験から離れてだいぶたつ人が懐かしむ、

もしくは

これから化学実験に取り組もうとする大学の新入生とかがいいのかな?

目次

CHAPTER1 実験をする前に

CHAPTER2 つくる実験

CHAPTER3 はかる実験

CHAPTER4 観察する実験

CHAPTER5 分ける実験

感想

前作の「ビーカーくんとそのなかまたち」に引き続き、うえたに夫婦の本です。

今作も、一般向けとしてはマニアックすぎるし、

ガチの人向けとしては絵柄がかわいすぎるし、

どこを狙った本なのかがいまいちよくわかっていませんが

ついつい手にとってしまうという不思議な本に仕上がっています。

 

冒頭の、水上置換法とかガスバーナーの取り扱いとかの説明を見てると

中学生くらいでもいけそう?と思うのですが、

次のニトロベンゼンからアニリンの合成実験をみると、

高校生で有機化学勉強してからのほうがいいね?と思い、

炎色反応でいややっぱり中学生でもいけると思いなおし、

最後の間違い探しで脱力。

なんなんだこの本(笑)

 

昔この実験やったね!とニヤニヤしながら大人が読むのが正解かもしれません。

 

ところで「マインクラフト」ってゲームで、

手持ち花火というアイテムを作ることができるのですが、

それが炎色反応そのものなんです。

塩化カルシウム」と「マグネシウム」と「棒」を組み合わせると、

オレンジ色の花火ができるんです。

小学生の子どもが「紫色の花火を作りたかったら塩化カリウムだよ」と言ってるのを聞いてびっくりしましたよね…

 

炎色反応を復習したい方にもおすすめです!

 

関連する本

「この形にはワケがある!ビーカーくんとそのなかまたち」 - 薬剤師がマインドマップ風に読んでみた