あらすじ
舞台は1960年代アメリカ。
才能ある化学の研究者エリザベスは、いまだ保守的な男社会の科学界で奮闘するが、無能な上司・同僚からのいやがらせ、セクハラの果てに、研究所から放り出されてしまう。
無職・未婚のシングルマザーになってしまった彼女がひょんなことからゲットした仕事、それはテレビの料理番組「午後六時に夕食を」で料理を指南する出演者だった。
「セクシーに、男性の気を引く料理を」というテレビ局の要望を無視して、科学的に料理を説くエリザベス。しかし意外にも、それが視聴者の心をつかんでいく……。
文芸春秋HPより
『化学の授業をはじめます。』ボニー・ガルマス 鈴木美朋 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS
対象はこんな人(本の帯から)
全女性(と全犬好き)に読んでほしい。
感想
Xで「すごい本を読んでしまった」*1という感想を見て気になっていたのが2024年1月。
すぐに入手はしたものの、なかなかに分厚い本なので読み始めるのに勇気が必要で、
読み始めるのに半年かかってしまいました。
でも読み始めたら1日であっという間に読んでしまった。
ぐいぐいと引き込まれる本です。
Xで見た通り、
「すごい本を読んでしまった」という感想しか読んだ当日は出てこなかったです。
主人公は女性化学者のエリザベス・ゾット。
あらすじは上記の通りですが、なんといっても魅力的なのがこのエリザベス。
絶対にぶれない。
前半はかなりつらい展開が続いて、読むのが辛いくらいだけど、
それでも絶対にぶれない。
爆弾を仕掛けられてもぶれない。
そのぶれない、凛とした姿が周囲を変えていく。
後半は怒涛の快進撃で、もう水戸黄門なみの「スカッと」です。
読後感は最高。
この本は出版社のHPによると「全世界で600万部売れた」そうです。
1960年代と50年以上前が舞台なのにそれだけ売れるということは、
日本は言わずもがな、世界中で未だ様々な差別が行われている、
多くの人がエリザベスに肩入れしたくなるようなことがあるのであろう、
と邪推します。
薬学部は比較的女性が多い学部だとは思いますが、
研究で身を立てるのは尋常ならざる苦労があるのだろう、
ということは考えるまでもありません。
日本女性科学者の会が公開している「日本の女性科学者たち2018」という冊子では、
現役のたくさんの女性科学者が「仕事と生活のバランス」を語っています。
この冊子、何がすごいかというと
ライフイベント(結婚とか出産とか)と研究場所、
つまりどのタイミングで大きなライフイベントを迎えたのかが
詳細に記載されていること。
ぜひ一度ご覧ください。(刊行物→SJWSロールモデル集2018)
しがない会社員の私から見ると、どの方ももはやスーパーウーマンです。
ただ、この冊子に載ってるのは研究で身を立てることができている方々です。
男性の研究者とお話ししていると、
奥様が同じ大学、とか同じラボだったという方が多くいることに気づきます。
夫婦どちらも大学教授、という最強カップルもいる一方、
奥様も博士号持ってるけど主婦だよ、という方もいます。
その選択をするまでに、夫婦でどれだけの葛藤があったのでしょうか、
と勝手に思ってしまいます。
現代は、先輩方が通ってきた道と比べればだいぶマシにはなっているはずです。
この道を後から通る人たちがもっと通りやすくなるよう、
1匹のアリのように微力ですが「働き続ける」ということで
道を踏み固めていきたいと思っています。
「化学の授業をはじめます」の最後の授業でのエリザベスの言葉を引用します。
定期的に読み返したい言葉です。
自分になにができるかできないか、他人に決めさせない。
性別や人種や貧富や宗教など、役に立たない区分で分類されるのを許さない。
みなさん、自分の才能を眠らせたままにしないでください。
自身の将来を設計しましょう。
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*1:詳細は文春HPを参照