本の紹介
日本の漢方医療の第一人者が、50年余東西両医学を活用する臨床医として活躍する中で見えてきた「漢方と科学の関係」や「理想とする医療の姿」について記した書。本書では、東西の壁を取り除き、漢方の知恵を活用する医療論を読者に説いている。より良き日本の医療を願う著者の熱い想いが込められた必読の1冊。
目次
第1章 医療の本質
第2章 漢方も交えて医療を考える
第3章 漢方と科学を考える
第4章 漢方の診断と治療、そして死生観
第5章 医学教育と漢方
第6章 漢方を取り入れた医師たちへのQ&A
第7章 印象に残った症例
第8章 漢方と社会 現状と将来展望
第9章 日本型医療システムの提案
こんな人におすすめ
医療とは何か、を考えたい人
西洋医学と漢方との上手な付き合い方を知りたい人
漢方に懐疑的な人
医療経済的問題に興味がある人
この本の推しポイント
名実ともに日本の漢方を引っ張ってこられた寺沢捷年(かつとし)先生のメッセージ、
というだけでおすすめしたいのですが、あえてそれ以外を挙げるとすれば、
漢方に対するスタンスや知識レベルがどんな人でもとっつきやすい本であること。
日本における今後の医療の在り方の理想図を示してくれること。
エキス製剤の供給問題に触れてくれていることもさすがだなと思います。
雑記
薬剤師・医師のなかでも、漢方に対するスタンスはいろいろです。
エビデンスが示せないようなものは信用しない、と言い切る方もいます。
この本の中でも、医師会での講演のあとの質疑応答で次のようなことを言われた、
というエピソードが示されています。
二千年前のクスリを今も使っている理由が分からない。そんなことだから漢方は古臭いと言われるんです。
よく講演会の質疑応答でこんな直球なコメントできるよ…
それに対して寺澤先生がどう打ち返したかは本書でご確認ください。
漢方を信頼できない、というのはもう仕方ないと思います。
タチが悪いのは、逆に振り切っちゃってる人。
漢方に心酔しすぎてなのか、必要以上に西洋医学を貶める人がしばしばいます。
にがりでガンが消える!抗がん剤なんて使わなくていい!って言ってみたり、
ホメオパシーに走ってみたり、
はたまたいつのまにか反ワクチンになってたり。
そういう方は攻撃的でキャッチーな言葉を使うので悪目立ちします。
そのふるまいが漢方のイメージを落としていることに気付かないんでしょうか。
特定の西洋薬の代わりとしか考えていないんだろうな…という方向に
走ってることも多いですよね。(時にメーカーMRがそんな売り方をしてることも)
私自身は大学の研究室が生薬だったこともあって、
社会人になってから10年くらいは漢方の勉強も積極的に続けていました。
でも周囲で上記のような事例をたびたび見てしまった、
また当時勤めてた会社で漢方がらみの業務から離れてしまったのを機になんとなく漢方からは距離を置いています。
それでも体調不良の時には漢方だったらどの処方が合うかな?と考えてみたりはします。
そんな状況で読んだこの本。
結果から言うと、読んでよかったです。
たぶん年末の「読めよ薬剤師」に入れると思う。
漢方と西洋医学のいいとこ取りの「今後のわが国で望ましい医療」とは
どういうものなのかの一つの解を示してくれています。
人間とは臓器という部品の集合体ではない。
臓器というのは人間という全体の一部である。
そして人間とは精神と身体が一体になったものである。
と考えると、人間全体を見る東洋医学の物差しは絶対に必要です。
一方で、臓器や遺伝子の異常をピンポイントに狙い撃ちする西洋医学の進歩によって
がんなどの疾患が克服されつつあるのも紛れのない事実です。
かかりつけ医は一人である必要はない。
様々な領域の医師が、「総合診療」のセンスを持ったうえで意思疎通し、
患者の状態や薬剤の内容を共有する。
ここで過剰な薬剤投与を避けるために調剤薬局の存在が重要になります。
この要請にこたえられる薬剤師になれるか。
それが「薬剤師」という職が今後どのように発展していくか、
それともAIに取って代わられるのかの分かれ道になるような気がします。
この本の中で薬剤師としてもう1点見逃せないのは、供給問題に触れていること。
サプライチェーンや生産コスト増大、薬価引き下げなどに言及されています。
この問題に関しては2022年の帝國製薬の漢方製剤撤退のニュースを見ると端的に分かりやすいと思います。
これからの時代にどのような医療の姿を目指すのか、
漢方という視点から考えてみるのはいかがでしょうか。
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