”みんなが使いやすい”だけじゃない!「薬学生・薬剤師のためのユニバーサルデザイン入門」

本の紹介

「共生社会の実現」が提唱される現代では,薬剤師や薬局にもユニバーサルデザイン(UD)の取組が求められている.本書では,UD誕生の背景から日本における発展,さまざまな障害のある人の基本的知識とサポート方法,さらに服薬場面や薬局での困り事に対するハード面,ソフト面での支援を解説.UDにかかわる具体的な事例,周辺情報,最新の商品紹介も盛り込んだ.

薬学生・薬剤師のためのユニバーサルデザイン入門 - 株式会社 化学同人

目次

第1章 ユニバーサルデザイン(UD)の成り立ち
第2章 日本で発展するユニバーサルデザイン
第3章 患者の多様性(ダイバーシティ)と求められる対応
第4章 患者と薬剤師の間のユニバーサルデザイン
第5章 薬局のユニバーサルデザイン

こんな人におすすめ

ユニバーサルデザインと聞いて、

ファイザーが使ってる「つたわるフォント」しか思いつかない人

この本の推しポイント

薬局で生じる様々な事項が、「ユニバーサルデザイン」という観点で整理できること。

配慮できている点、できていない点がクリアになります。

雑記

ユニバーサルデザイン」とは、次の概念です。

年齢や能力の違いにかかわらず、できる限り多くの人が、可能な限り最大限に使いやすい製品や建築、環境のデザイン

デザインと言われると、一番に思い浮かぶのが包装ですよね。

開けやすい、とか見やすいとか。

それ以外に何かあるのかな?と思いましたが、

この本を読むと実に多様な事例が紹介されています。

 

例えば患者さんが薬を飲めていない、という課題があるとき。

原因は薬の剤型が患者さんの身体能力にあるとしたら、

以下の3つの視点で解決策を考えることができます。

1)1つのデザインで多くの利用者が使いやすいものを選ぶ

2)複数のデザインを用意し、利用者が自身の能力や好みに応じて使いやすいものを選ぶ

3)基本の部分は同じデザインであるが、部分的に利用者に応じ変更する

 

1)は「みんなが」使いやすいものを選ぶということ。

2)はいくつかあるなかから「患者さんにとって」使いやすいものを選ぶということ。

3)は一包化したり、とろみ剤を使ったり、補助具を紹介したりすること。

 

ユニバーサルデザインと聞いて、

私は1)の「みんなが使いやすい」しか思いつきませんでした。

でも困りごとは一人ひとり違うわけで、

全員が使いやすいデザインなんてないんですよね。

3)もユニバーサルデザインの考え方であることを認識してませんでした。

具体的な補助具も紹介されています。

 

また薬局の設備、環境のユニバーサルデザインという面にも触れられています。

ハード面ではスロープとか手すりとかトイレ、細かいところでは杖ホルダーとか。

子どもが生まれてベビーカーや抱っこ紐で病院や薬局に連れていくとき、

医療機関の広さや設備の有無によってこんなにもハードルが上がるのか、

と白目をむいたことを思い出します。

 

でもこの本にも書いてあるのですが、

ハード面が整っていても、スタッフの対応、

すなわち「ユニバーサルサービス」が不十分であれば失望を招きます。

逆に、ハード面ではイマイチでも、

スタッフの心遣いで助けられたことはずっと心に残ります。

入口に数段段差があるクリニックでベビーカーで段差を上がるのを助けてくれたり、

自動ドアでないガラスのドアをベビーカーで入るのに苦労していたら

さっと開けてくれたり、と助けてもらったことは数え切れません。

 

ユニバーサルデザインの考え方をもって、

一人ひとりの患者さんがためらいなく薬局を利用して

確実に薬を使って健康を維持できるようにお手伝いすること、

それがこれからの薬剤師に求められる姿勢の1つなのだろうと思います。

 

今まで薬剤師としては意識していなかった「ユニバーサルデザイン

の視点を考えさせてくれる、良い本でした。

表紙の触り心地もマットなんだけどつるっとしててすごく好きな触感です。

 

ただ、1点文句を言いたいのですが、誤植が多い。

写真を載せといて製品名や企業名が間違えてるというのは

さすがに失礼じゃないですかね…化学同人さーん!

HPをみましたが特に正誤表とかも出てないみたい。

薬学生・薬剤師のためのユニバーサルデザイン入門 - 株式会社 化学同人