コロナを忘れつつある今こそ読む本-感染ミステリー-

 

【感染】

①病気がうつること ②他からの好ましくない影響を受けてそうなること

 

感染症

病原微生物の感染によって起こる病気。感染症予防医療法では、感染力の強さなどにより五つの類型に分けられる。伝染病は人から人に移るものについて用いられ、感染症は、広く人から人には移らないものをも含めて言う。

 

新明解国語辞典第7版(三省堂)より

 

「今だからこそ読みたい」と帯にもある通り、二度目の緊急事態宣言のさなかの2021年2月に発行された、古今東西感染症がらみのミステリーを集めた書籍。

 

感染症というとどうしても職業柄病原体が何だとか、感染経路とか、経過とか治療薬とかに意識が向いてしまいます。

ただヒトからヒトへ感染する病気はそこに「移す人」「移される人」というヒトとヒトとの関係性が生じる。

感染症という未知の恐怖に支配された環境で、ヒトとヒトとの関係にどんな変化が起こってきたかは私たちがこの数年で痛感してきたことです。

これほど人間味あふれた題材はないかもしれません。

 

コナン・ドイルなど洋モノからごく近年の作品まで8作品のオムニバスですが、

私のおすすめは西村京太郎氏の「南神威島」。

南の島のまばゆい太陽と、そこで起こるどろどろとした人間関係の対比がたまりません。

 

そして何より巻末にある選者の解説がよいのです。

コロナを忘れかけている今だからこそ、この解説を読むべきと思います。