悩ましい「新 小児薬用量」と「小児薬用量ガイド」

おなじみ「新小児薬用量」の改訂版です。

私がよく使うようになったのは改訂第5版だった(表紙の色で覚えてた)ことを考えると、

ずいぶん版を重ねたものだなと思います。

 

この本のよいところはコンパクトなサイズ、見開きで情報が得られること、

あとは年齢ごとで小児量が見られること。

今回から相互作用の記載が追加になったのが売りのようですが、

あまり情報量としては多くないし、

何よりこの本で相互作用の情報はあまり必要としないので

私にとってはメリットとまでは言い切れません。

 

使っているとカバーがすぐペラペラとはがれてきちゃうので、

いっそのこと剥がして使おうと思うんだけど

カバーを剥がすと紺地に銀色の何の面白みもないデザインなんですよね。

触り心地もいまいち。

なのでペラペラするな(怒)と思いながらカバーをつけて、

今回も使っていくんだろうなと思います。

 

個人的にはじほうの「小児薬用量ガイド」のほうが

見やすさだったり体重kg当たりを基本にしている点で好きです。

めくり心地も好き。こちらも今年改訂されました。

ただ、「小児薬用量ガイド」から用量を紹介すると、

「多くない?」と言われることが多い印象があります。

そんな時にやはり頼りになるのは安定の「新 小児薬用量」。

「新 小児薬用量」で年齢ごと、「小児薬用量ガイド」で体重ごとと

うまく使い分けていくのがよさそうです。

 

 

2024年4月発売の薬剤師関係の雑誌

あっという間に4月も2/3が終わってしまいましたよ!

雑誌を!読まないと!5月になってしまう!

 

私が主にチェックしてるのは以下の4つです。

 

  • 月刊薬事(じほう)

4月号は「多角的な視点でみる水・電解質・酸塩基平衡異常」

月刊薬事|株式会社 じほう

  • 薬局

4月号は「ストップ!CKD 「腎臓を守る」包括的な視点」

南山堂 / 月刊誌「薬局」

  • 調剤と情報

4月号は「クリーンスポーツを支える 薬剤師に求められるアンチ・ドーピングの知識と情報発信」

調剤と情報|株式会社 じほう

  • 治療

4月号は「プライマリ・ケアでみる睡眠の悩み」

南山堂 / 月刊誌「治療」

 

チェックしてるとか偉そうなことを最初に言っておいて、

今月はまだ「調剤と情報」しか読めてないです。

スポーツファーマシストを更新したばかりだったのでタイムリーな特集でした。

資格を取ったら終わりではないのでね。「薬剤師」という免許がそもそもそうか。

就職したときの先輩に

「薬剤師にはなぜ資格手当がついていると思うの、その手当で勉強するためだよ」

と言われたのを思い出します。

初心忘れるべからず。

もう4月ですが…今年こそ謙虚に仕事しよう!「校閲至極」

 

毎日新聞校閲センターさんの本が好きで、よく読んでいます。

 

どの本も日本語に対する意識を見直させてくれるありがたい本なのですが、

特にこの本で印象に残った言葉があったのでご紹介させてください。

 

1つは

校閲をしている方からの

「力及ばず間違えることがある、そのあとどうやって立ち直ったらいいのかわからない」

という質問に対しての回答です。

間違えたことを悔しがる気持ちを大切にし、それを次にどう生かし、自分の引き出しをいかに増やしていけるかと考えたらいかがでしょう

 

どうしても仕事上間違えてしまうことはあります。

間違いを嘆くだけでなく、それを糧にして次にもっといい仕事をしようと思わなければ

いけないと思います。

 

またもう1つ、

校閲とは人の間違いを見つけて「悦」に入るような仕事というよりは、

間違いを見逃して「恐れ」を抱くかたが多い

 

私、他の人の文書チェックとかしてて間違いを見つけると、

つい「イエイッ!」とか「ヤッター!」って思ってしまうんですよね。

自分の書く文章は間違いだらけなくせにね。

見逃して大事件にならないよう「恐れ」を大事に、謙虚に仕事しようと思いました。

 

毎日新聞校閲センターの本がもっと読みたい方は以下の2冊もどうぞ。

「斉」と「斎」は別の字 「校閲記者の目」 - 薬剤師がマインドマップ風に読んでみた

正しいとか正しくないとか「校閲記者も迷う日本語表現」 - 薬剤師がマインドマップ風に読んでみた

 

「この形にはワケがある!ビーカーくんとそのなかまたち」

薬学部といえば実習。

今は4月、新入生の皆さんも実習の予定など配られてワクワクしてる頃でしょうか。

私の卒業した大学は1年生最初の2か月の実習は薬用植物学実習だったので、

毎週毎週お花の観察をしてました。

今のカリキュラムではどうなってるのでしょう。

 

この本は、薬学生なら必ず見たことがあるであろう実験器具を

イマドキのかわいいイラストとマニアックなコメントで紹介しています。

絵とコメントの落差がすごい。

 

表題になってるビーカーだけで7種類も紹介されてます。

石英ガラスビーカーなんて触ったことない気がする。

もちろんビーカーだけではなく、フラスコだって8種類。

リービッヒ冷却器とかビュレットなんて久しぶりにその名前を聞きました。

 

そして単なる紹介にとどまらず、ほぼ全ての実験器具に

筆者本人(と思われる)の失敗談が記載されています。

フラスコにゴム栓が落ちたとかガラス細工に熱中して実験がおろそかとか…

 

読んでいくうちに蘇る学生時代の失敗の数々。

 

私のような遠い昔の学生時代を思い出すのもよし、

薬学部に入りたての学生さんの副読本とかでもいいんじゃないかなと思います。

たかが果物、されど果物「まるまる、フルーツ」

 

「一番好きな果物は」と聞かれたら何と答えるでしょうか。

私だったらさくらんぼと梨の2トップがいますのでどちらかを大変迷います。

 

この本はいろんな作家さんの好きな果物に対する思い入れをまとめた本です。

いちごあり、さくらんぼあり、柑橘系各種に桃、メロン、スイカ

すごーくうらやましかったのが、

光野桃さんのお父さんのボーナスで果物食べ放題の話。

池波正太郎氏の「一房のブドウを三口ほどで食べる」話もやってみたい。

 

果物には皆さん様々な思い入れがあると思います。

 

普段使いの果物としては私はグレープフルーツが大好きなのですが、

グレープフルーツといえば相互作用。

このお薬を飲んでいる間はグレープフルーツは避けてください、

と言うのは簡単。

でもその対象がこの本のように思い入れのある果物だったら?

私はグレープフルーツ大好きなので簡単にそう言われたら憤慨します。

薬を使うという行為は普段の生活に入り込んでくるものだからこそ、

普段の生活とうまく組み合わせられるように、ということを意識していきたいです。

 

最近ホワイトグレープフルーツがなかなかスーパーで売ってなくて禁断症状が出そうだったのですが、

昨日やっとスーパーで買えました。

久しぶりに食べるグレープフルーツ、おいしいー!

このほろ苦さはメローゴールドとかルビーのグレープフルーツとはやっぱり違うんです。

 

グレープフルーツつながりでこちらもどうぞ。

pharmacistreading.hatenablog.jp

これからも生き残っていけるか?「家庭薬ロングセラーの秘密」

 

「家庭薬」って聞いたことありますか?

恥ずかしながら私はあまり聞いたことがありませんでした。

 

そもそも家庭薬の定義とは?

「家庭薬 定義」でググったところ、

2012年のファルマシアの記事が出てきました。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/48/6/48_KJ00009649776/_pdf

東京都家庭薬工業協同組合(東家協)および全国家庭薬協議会(全家協)のHPからの引用として、

「長い伝統と使用経験を積んだ家庭の常備薬」(東家協 HP )
「日本の伝統と文化に育まれ,現代科学によって研ぎ澄まされた伝統と安心のくすり(全家協 HP)

だそうです。

 

…はて。薬機法とかに載る単語ではないので、明確な定義はないのでしょうね。

「昔から身近にある一般用医薬品」ってところでしょうか。

 

さて、この本では全国家庭薬協議会の加盟会社が販売する家庭薬の数々が、

1商品につき見開き2ページ、フルカラー・写真満載で掲載されています。

 

太田胃散とかキンカンとか、ユースキンAなど我が家の薬棚にも入っているもの。

サロンパスAとかノーシンとか、家庭薬って言葉から個人的には想像できなかったもの。

宇津救命丸とか樋屋奇応丸、恵命我神散など私が想像した「ザ・家庭薬」まで。

養命酒とか金鳥の渦巻なんかも家庭薬の範疇のようです。

 

それぞれの薬の歴史や効能効果、成分分量が数々の写真とともに載っています。

見どころは明治・大正・昭和初期あたりの広告や製品パッケージ!

こんなに一度に、カラーで見られるのは貴重です。

現代と大して変わらないパッケージのものもあれば、

大きく様変わりしているものもあり、各企業の姿勢が見えてきます。

それぞれの薬に歴史あり。

 

ただ、この本に載っている商品を

現在の10代、20代がこの先使っていくかと言われるとだいぶ答えづらい。

40代の私でさえ、「祖母の部屋で見たような?」というレベルの商品も多く、

我が家の次世代である子どもたちは存在すら知らないはずです。

「命の母」みたいに販売会社が変わってリニューアルしたことで、

若年層に広く知られる例もあるので何とも言えないところではありますが。

 

これからの家庭薬の未来を楽しみにみていきたいと思います。

 

ところで龍角散の名前の由来って、

当時配合されていた龍骨、龍脳、鹿角霜の名を結び付けたんですって。

でもいずれも後に処方見直しの際に外れてしまったそう。

現在の処方はキキョウ、キョウニン、セネガ、カンゾウの4つの生薬です。

龍角散の成分って初めて調べたかもしれない。

ポピドン?ポビドン?「薬の名前には意味がある」

 

 

薬の名前の由来って言われたら、商品名をまず思い浮かべます。

 

例えば「ヨーデルS」の名前の由来、インタビューフォームによると

スイスのヨーデルの爽やかな感じをイメージさせるため。

また、S は superior(優れた、上質の)を意味する。 

らしいですよ?

絶対違うと思いません?

 

この本もきっと商品名の由来を集めた本…と思いきや、

まさかの一般名に関する本です。

 

例えばバルサルタンがなぜバルサルタンって名前なのか、

考えたことはあるでしょうか。

 

…私はないです。

 

エドキサバンは第一三共の研究所のある江戸川区の「エド」由来なんですよね。

https://www.daiichisankyo.co.jp/files/investors/library/annual_report/index/pdf/valuereport2014jp.pdf♯page=28

しかし改めてなぜバルサルタンって考えたことはない。

末尾にサルタンがつけばARBだというのは知ってる。

けれどもなぜARBにサルタンがつくかなんて考えたことなかった。

 

この本はそういうところを小ネタや歴史を交えながら、

1つ1つ解説してくれる本です。

 

バルサルタンはバリンの構造を含む選択的アンジオテンシン2受容体拮抗薬だから、

valine+selective angiotensin receptor antagonistvalsartanだって。

 

また某知事さんが大好きなご様子のポビドンヨード

ポ「ピ」ドンヨードだと勘違いしてる方が結構多いように思います。

もっともこれはポピヨドンだのポピラールだのポピヨードだの、

大変紛らわしい商品名をつけてしまったメーカーにも一定の責任があると思います。

ビよりはピのほうが響きがかわいいけどさ。

ポッピーピポパポ(by仮面ライダーエグゼイド)然り。

 

ただポビドンヨードはポリビニルピロリドンとヨウ素の複合体であって、

ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)を短縮して

ポビドン(povidone)です。

ポビドンの「ビ」は「ビニル」の「ビ」!

薬剤師を名乗るなら間違えたくない一般名です。

 

こんな感じで約300種類の一般名の由来が楽しく解説されてます。

カタカナはいっぱい出てくるけど、元が薬事日報のコラムだったこともあってか、

1つの話題は見開き2~3ページ、イラストもたっぷりでフォントもかわいい、

そんなに分厚くないし本のサイズもA5なので寝ころんで気軽に読めます。

 

大学を卒業したばかりの一般名がしっかり頭に入ってる方にもいいけれど、

薬をよく知ってるベテラン勢にこそおすすめしたい本です。

新たな発見がきっとあるはず。

 

しかし惜しむらくは表紙…

固いフォントとゆるいくまさんやらモアイ像のイラスト、

この組み合わせはどうにかならなかったんでしょうか。

薬事日報社だからね。これでも冒険したよね。

いつも薬機法とかGMPとかの固い本を出してますもんね。

 

表紙はともあれ中身は小ネタ満載でおすすめです。

 

この本も「ファルマシア」に書評がのってたのでリンク貼っておきます。

PDFダウンロードには認証がいるけど、

下にスクロールして「記事の1ページ目」ってところで見れてしまう。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/60/1/60_58_2/_article/-char/ja