大好きな作家さんつながりで、柚木麻子さんです。
「アッコちゃん」シリーズはさらっと読めるのに読むと一気に元気になれる、
ある意味エナジードリンクのような本で定期的に読み返したくなります。
柚木麻子さんの子育ての記録inコロナ禍です。
そこかしこにほとばしる怒り。
この怒りを行間に詰めて文章に昇華できるのが、さすが「アッコちゃん」の作者だなと読みながら思います。
そんな中でおそらく著者からしたら見当はずれの、私が怒りを感じたエピソードが次の内容。
母乳で育てている子どものために、なんと私が卵と乳製品を完全に断たねばならなくなった。
おそらくアレルギー絡みで医師から食事指導を受けて卵と乳製品を除去することになったんでしょう。
この後ご友人にセカンドオピニオンをすすめられて、別の病院では再開してもいい、そもそも断つ必要がなかったと診断されたというエピソード。
ただセカンドオピニオンを受けるまでの間には年末年始、節分を挟んでいる。
クリスマスケーキなし、おせちなし、恵方巻なし、仕事中のカフェラテもなし。
チョコレートには乳化剤が入っているので避けたとのこと。
乳化剤は除去する必要ないでしょ!と思ったけど最近は乳由来のものもあるのね。
臨床:牛乳アレルギーで注意すべき乳化剤がある?:DI Online
類似の話を別の本でも見たことがと思ったらコンドウアキさんのコミックエッセイ。
2011年発行の「トリペト2 オカアチャン1年生」で、生後5か月の長女トリペちゃんにかゆかゆが出て、
「お母さん卵たべる?」「マヨネーズは?」「プリンは?」と医師に聞かれ、
プリンを食べたということで卵除去、イクラとか魚卵もダメという指導をされる。
あとがきで、「四六時中卵のことを考えてました。当時は授乳中の私も完全除去ということだったので…卵に寝不足に、仕事完全復帰で保育園に…と精神的に非常にまいっていた時期です。せっかくカワイイ時期だったのに、惜しいことをした…」とあります。
それから3年後の設定の「トリペト6 てんてこしまい」では次女のモッチンに赤い発疹が出たということで病院では卵に陽性反応が出るも、
「本人は1歳まで除去」「お母さんは卵除去しなくていいよ」と言われて、3年前のトリペのときの完全除去とは方法が変わっていてヨカッタ…というくだりがある。
この本は2016年発行で、コメントに「それからまた6年たってますので変わってると思います」とのコメントがあるのでおそらくこれは2010年ごろの話。
しかし冒頭の柚木さんのエッセイは2018年の話のようです。
食物アレルギー診療ガイドライン2021には次の文言が明記されている。
小児期の食物アレルギーの発症予防のため、妊娠中や授乳中に母親が特定の食物を除去することは、効果が否定されている上に母親の栄養状態に対して有害であり、推奨されない。
アレルギーガイドライン2021 ダイジェスト版 第6章 リスク因子と予防
いつからこの記載はあるんだろう?と過去のガイドラインをさかのぼってみたところ、
食物アレルギー診療の手引き2005に以下の記載がありました。
妊娠中・授乳中にアレルギー性疾患発症予防のために食物制限を行うことは十分な根拠がないために通常勧められていない。
https://www.foodallergy.jp/wp-content/themes/foodallergy/pdf/manual2005.pdf
ガイドラインに従わなければいけないわけではないのは百も承知です。
ただ、ガイドラインから外れる場合はなぜその治療をするのか、根拠を示してほしいし説明してほしい。
これらのエピソードのような、非常に大きな負担を強いるのならばなおさら。
きっと柚木さんにしろコンドウアキさんにしろ、その説明はほとんどされないまま、苦しい日々を過ごしたんじゃないかと想像します。
医療従事者の言葉が患者さんには呪いとなりかねないことを自覚しなければならない、と自戒を込めて強く感じたエピソードでした。
それはそうとコンドウアキさんのトリペとシリーズは子育て中の方にとてもおすすめ。
リラックマの産みの親です。