薬剤師がマインドマップ風に読んでみた

本を薬学にこじつけて紹介します

緑内障は不治の病なのか『満月が欠けている』

私は強度の近視です。

コンタクトレンズの度数を伝えると「そんな度数存在するんですか…」と若干引かれるくらいの度の強さ。

近視が強いと緑内障のリスクが上がるので、何年か前から予防的に点眼薬で眼圧を下げています。

2ヵ月に1回の通院と半年に一度の視野検査で

緑内障が発症していないか、進んでいないかを診てもらっています。

強度近視の時点で既に視神経にある程度のダメージは生じていて、

そのダメージは元に戻すことはできない。

でも、ダメージを広げないようにケアしていくことはできる。

「死ぬまで見えていたら勝ち」、それが緑内障の治療だと思っています。

 

ところで昔、「L25」というフリーペーパーがありました。月2回くらい出てたのかな?

L25で私が楽しみにしていたのが穂村弘さんの「蚊がいる」というコラム。

どの回だったかは思いだせないのですが、

いつかのコラムを見て「この人はやばい人だ……」(褒め言葉のほうの「やばい」です)と感じて追いかけるようになり、

「蚊がいる」を読むためにL25をゲットしていました。

そのあとも穂村弘さんのエッセイが出るたびになんとなく気にはなってたんです。

いつの間にかL25は無くなってしまったなあ。

 

追いかけ続けてきた穂村さんの、最新のエッセイは緑内障に関するものでした。

「満月が欠けている」っていいタイトル。

ふだんのとぼけた内容なんだけど、

背景に緑内障という「不治の病」がちらちら見え隠れします。

とはいえ自分が片足を突っ込んでるからか、薬剤師という仕事柄か、

私は「緑内障が不治の病」って認識がこれまで一切ありませんでした。

 

穂村さんがこの本の中で書いているような、

朝起きたら目が見えなくなってるんじゃって恐怖も感じたことないし、

どうせ見えなくなるんだったらと物欲が無くなるなんてこともない。

 

五十肩や老眼みたいな「あーとうとう来ちゃったかー年だもんねー」くらいの認識でした。

痛くもないし、見た目も変わらない、目薬を差してコントロールできてるかを見張っとけばいいでしょって感じ。

 

だから「不治の病」と言われると「?!」という気分になりますが、

死ぬまでおつきあいしなきゃいけない疾患、と考えればまぎれもない「不治の病」ですね。

 

緑内障診療ガイドラインには次のような記載があります。

日本における初回緑内障点眼薬処方患者は治療開始約1年でその40%が治療から脱落すると報告されており(以下略)

出典:日本眼科医会HP 緑内障診療ガイドライン(第5版)

https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/glaucoma5th%20(2).pdf

ほっとけば失明に至る可能性があるのに治療開始1年で40%が脱落。

脱落の要因としては、

・自覚症状がない

・受診時以外は眼圧治療効果のフィードバックが得られない

・自己点眼治療の負担が大きい

などが挙げられています。

 

あまり深刻に考えすぎて「人生終わった」みたいに思う必要は全くないですが、

「自覚症状ないしめんどくさい」と放っておくのは危険。

治療への意欲をどうやって保ち続けるかは、緑内障を治療するうえで大きな課題になるんだろうなと思います。

 

同じ病気であっても、その病気を抱えてこれから生きていくにあたって、見えている風景は一人ひとり違う。

緑内障という疾患を通して、その風景の違いを実感することができた本でした。

 

ところで、今回の本はこれまでの穂村さんのエッセイ本とはちょっと雰囲気が違うなと思っているのですが、

精神科医の先生との対談のところで私の好きな「やばい」穂村さんっぽいところを発見。

「天国にはゴキブリはいるのか。殺虫剤はあるのか。(以下略)」