薬の名前の由来って言われたら、商品名をまず思い浮かべます。
例えば「ヨーデルS」の名前の由来、インタビューフォームによると
スイスのヨーデルの爽やかな感じをイメージさせるため。
また、S は superior(優れた、上質の)を意味する。
らしいですよ?
絶対違うと思いません?
この本もきっと商品名の由来を集めた本…と思いきや、
まさかの一般名に関する本です。
考えたことはあるでしょうか。
…私はないです。
エドキサバンは第一三共の研究所のある江戸川区の「エド」由来なんですよね。
しかし改めてなぜバルサルタンって考えたことはない。
末尾にサルタンがつけばARBだというのは知ってる。
けれどもなぜARBにサルタンがつくかなんて考えたことなかった。
この本はそういうところを小ネタや歴史を交えながら、
1つ1つ解説してくれる本です。
バルサルタンはバリンの構造を含む選択的アンジオテンシン2受容体拮抗薬だから、
valine+selective angiotensin receptor antagonist でvalsartanだって。
また某知事さんが大好きなご様子のポビドンヨード、
ポ「ピ」ドンヨードだと勘違いしてる方が結構多いように思います。
もっともこれはポピヨドンだのポピラールだのポピヨードだの、
大変紛らわしい商品名をつけてしまったメーカーにも一定の責任があると思います。
ビよりはピのほうが響きがかわいいけどさ。
ポッピーピポパポ(by仮面ライダーエグゼイド)然り。
ただポビドンヨードはポリビニルピロリドンとヨウ素の複合体であって、
ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)を短縮して
ポビドン(povidone)です。
ポビドンの「ビ」は「ビニル」の「ビ」!
薬剤師を名乗るなら間違えたくない一般名です。
こんな感じで約300種類の一般名の由来が楽しく解説されてます。
カタカナはいっぱい出てくるけど、元が薬事日報のコラムだったこともあってか、
1つの話題は見開き2~3ページ、イラストもたっぷりでフォントもかわいい、
そんなに分厚くないし本のサイズもA5なので寝ころんで気軽に読めます。
大学を卒業したばかりの一般名がしっかり頭に入ってる方にもいいけれど、
薬をよく知ってるベテラン勢にこそおすすめしたい本です。
新たな発見がきっとあるはず。
しかし惜しむらくは表紙…
固いフォントとゆるいくまさんやらモアイ像のイラスト、
この組み合わせはどうにかならなかったんでしょうか。
薬事日報社だからね。これでも冒険したよね。
いつも薬機法とかGMPとかの固い本を出してますもんね。
表紙はともあれ中身は小ネタ満載でおすすめです。
この本も「ファルマシア」に書評がのってたのでリンク貼っておきます。
PDFダウンロードには認証がいるけど、
下にスクロールして「記事の1ページ目」ってところで見れてしまう。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/60/1/60_58_2/_article/-char/ja