アンタブス?アンタビュース!「声に出して読みたい理系用語」

響きがかっこいい言葉ってありますよね。

私はスリランカの首都を声に出して読むのがとても好きです。

 

この本は理系用語に焦点をあてて、

声に出して読みたい用語をフィーチャーした内容です。

なじみぶかい生物、化学、医学以外にも数学やら物理やら地学の用語も入ってるので、

全く知らない単語も結構あります。

地学用語なんて高校時代かじってもないのでさっぱりわからん。

ハッブル・エクストリーム・ディープ・フィールド」って…

わかるようなわからないような。

いや、化学用語とされてるものにもわからないものが。

「ガルヴァニック・コロージョン」ってなんだ?

どの単語にも簡単な解説がついてるので大丈夫です。

 

この本に出てくる用語で薬学関係でなじみ深いのはナチュラルキラー細胞でしょうか。

アナフィラキシーショックも響きがきれい…か…?身近すぎてよくわかりません。

こまごめピペット…?銀鏡反応(懐かしすぎる)…?高速液体クロマトグラフィー…?

専門外の方からは声に出して読みたくなるのでしょうか。

「アンタブス」という用語も取り上げられてるのですが、

私は「アンタビュース」読み派です。

私が一番好きだったのはやはり「2,4,6-トリニトロトルエン」ですね。TNT

 

随所に入る理系あるあるや理系豆知識のコラムもおもしろいです。

理系っぽさを醸し出したければぜひ。

日常会話にどう理系用語を取り入れるかの「用例」も各用語に(!)ついてます。

 

理系あるあるならば↓の本もどうぞ。

薬学部は理系なのか?「理系あるある」 - 薬剤師がマインドマップ風に読んでみた

 

正しいとか正しくないとか「校閲記者も迷う日本語表現」

 

「とんでもございません」

この言葉、私が社会人になったころは間違い、

正しくは「とんでもないです」もしくは「とんでもないことです」ですよ、

と注意されました。

その後文化庁の「敬語の指針」で、

限られた状況においては「とんでもございません」が認められるようになり、

現在ではマナー講座などにおいても「とんでもございません」は

スルーされることが多いように思います。

(むしろ最近では「とんでもないことです」は儀礼的すぎて違和感があるって講師に言われたことがあります)

 

この本は言葉の海の中でお仕事されている校閲記者さんのお仕事本ですが、

迷いやその理由がありありと書かれていて読み物としておもしろいです。

例えば

「蛇口はどうやって数える?『個』?『本』?」とか、

「エンジンは『吹かす』のか『噴かす』のか」、

「『3000人台を突破』って何人になったということか」、

「『ほぼ』と『ほぼほぼ』はどう違うのか」、

「『一両日』は『今日か明日』なのか『明日か明後日』なのか」

など。

 

辞書によっても解釈が違ったり、

日本語として正解の表現であっても一般市民の認識が違ったりして、

「これが新聞記事として適切」というのが明確でないのですね。

 

「言葉は生き物」と言われる通り、

使われ方やその意味するところは移り変わっていくので、

自分が正しいと思って使っている言葉遣いが

相手にこちらの意図する通り伝わっているかは常に意識すべきと思います。

 

以前、「口腔内崩壊錠」という言葉を見た患者さんが

「口が崩れる怖い薬」と思い込んでいたということがありました。

驚いたのは、何かのアンケート結果で

上記の思い込みをしている患者さんが決して少なくはなかったということ。

自分は何気なく使っていた言葉が、

患者さんにとっては恐怖の言葉になっていたということを

改めて認識させられるエピソードでした。

 

ところでこの本で一番びっくりしたのが、

「予想の斜め上をいく」のような「斜め上」の表現、

元ネタは冨樫義博氏の「レベルE」だそうですよ。

2022年1月刊行の三省堂国語辞典第8版にも収録されたそうです。

冨樫義博、すごっ!

どんな場面が元ネタになったのかも紹介されてますのでぜひご確認ください。

 

毎日新聞校閲センターの本は「校閲記者の目」もおすすめです。

「斉」と「斎」は別の字 「校閲記者の目」 - 薬剤師がマインドマップ風に読んでみた

情報検索のプロにその姿勢を教わる「プロ司書の検索術」

 

司書さんになりたい、と思っていた時期があります。

諸々の事情があって司書ではなく薬剤師の道を選んだわけですが、

限られた分野の中とはいえ薬剤師も高い情報収集能力が求められる職業であり、

その情報収集ツールは広く持たないといけないなと常々感じています。

 

薬剤師関係の情報収集ツールがある程度まとめられているのは

病院薬剤師会がまとめた「医薬品情報業務の進め方2018」ですかね。

https://www.jshp.or.jp/activity/guideline/20220512-5.pdf

 

薬関係以外の情報収集ツールってどんなのがある?と知りたくて、

検索ツールの幅を広げたくてこの本を読みました。

 

ただ先に言っておきたいのはこの本はただツールを並べた本でなく、

情報収集をするときの姿勢や心構えから説明してくれる本です。

薬剤師として情報収集するときにも、この姿勢は必ず役に立つものと思います。

 

ちなみにツールとして紹介されてたもので、

ネット上で見れそうなもの、かつ私が今後使いそうだなと思ったのは以下の2つ。

ご参考までに。

図書館員が選んだレファレンスツール2015

Webcat Plus

 

ところで以前はサーチャー検定って呼ばれていた検索技術者検定、

数年前受けようと思って目指してたんだけどもう一度挑戦してみようかな…

「プロ司書の検索術」を読んだら改めて勉強したくなってきた。

2級は例年だと11月末です。

検索検定(正式名称:検索技術者検定) | 情報科学技術協会 INFOSTA

 

薬学部は理系なのか?「理系あるある」

 

 

理系の定義とは何でしょうか。

高校では3年生になるときに理系科目を選択すると、

自動的に理系クラスに割り振られました。

化学を選んだ私は理系クラスでした。

大学で薬学部に入学しましたが、

実験もたくさんしたと思うしレポートも書いたけど、何より暗記することが多かった。

暗記が好きでないとハードモードの学生生活になりそうな気がします。

卒業してからも、文章を読んだり書いたりする機会がとても多いです。

そして求められる暗記力。

果たして薬学部は理系なのでしょうか。

 

「理系あるある」の前書きでも「理系の人とは誰を指すのか、世間ではわりと曖昧です」としたうえで、「素数にこだわったりドップラー効果や炎色反応について口走ったりすることが理系の条件なのだと述べておく」と表現されています。

 

さて、この本の中身。

  1. 数学あるある
  2. 実験室あるある
  3. 日常生活あるある
  4. 天文あるある
  5. 誤解あるある
  6. 番外編:理系あるあるショートショート

と章に分かれているのですが、

著者が理学部卒、専門が宇宙物理学とあって若干薬学部からは距離を感じる内容もありつつ、分かるよ分かる!という内容も多いです。

 

キムワイプで鼻をかんでゴワゴワするな…と思ったことありますよね。

花火を見て炎色反応が頭をかすめますよね。

パスタをゆでるとき塩を加えて沸点上昇って思いますよね。

 

ふふって思う内容が続きます。

何より私が一番共感したのは次のあるあるです。

 

「リケジョ」と呼ばれてイラっとくる

 

「リケジョ」、実は講談社登録商標だそうです。

私は自分のことを「リケジョ」とは絶対に言わないし、言われるとイラっとします。

それだけに…自分の出身大学が「○○大のリケジョに聞く!」とかいう動画を出してた時にがっくり来ましたよね…。

 

この本の中で一番そうだよそう!と思ったのが、

潜在的理系女子に理系進学をさせたいならスター研究者の例を挙げて的外れな励ましをするよりも、むしろ子育て後に職場に復帰する理系女性やパートタイムで働く理系女性など、もうちょっと普通で楽な人生コースを紹介する方が有効な気がします。

という一文と、

何より

スター科学者でなく捏造もしていない大勢の女性研究者をリケジョ呼ばわりするのをやめるのはどうでしょうか。

という一文でした。

 

少子化の時代、理系に学生を呼び込みたい大学の思いはよくわかります。

でも、大学が自分の学生を「リケジョ」呼ばわりするのはやめてほしい。

リケジョになりたくて、そう呼ばれたくて大学に入ったわけではないんです。

比較的女性が多めの、薬学部でさえ大学が自分の学生のことを「リケジョ」とか言っちゃうのがとても残念です。

 

「リケジョ」の言葉には思うところあって真面目な感想になっちゃいましたが、

この本自体は寝転んで読める気楽な本です。

この本の作者は周期表に関する本も書いてるそうで、そちらも機会があったら読んでみたいですね。

 

この本には載ってないんですが、

以前テレビの「踊る!さんま御殿」で理系の人を集めた回があって、

「ロッカーを選ぶときは偶数ではなく奇数、できれば素数を選びたい」という意見が出てました。

私も同意見なのですが、これは理系の人に共通することなんでしょうか。

 

薬学部は理系なのか、そう聞かれたら私は

「理系でないと入れない。

ただ入学してからも卒業してからも文系的スキルが大いに求められる。」

と答えます。

どちらも楽しめてお得ですよ。薬学部。

 

理系用語を日常生活に積極的に取り入れていきたい方は

「声に出して読みたい理系用語」もおすすめ。

アンタブス?アンタビュース!「声に出して読みたい理系用語」 - 薬剤師がマインドマップ風に読んでみた

 

 

 

私も怒りを感じた「とりあえずお湯わかせ」

大好きな作家さんつながりで、柚木麻子さんです。

「アッコちゃん」シリーズはさらっと読めるのに読むと一気に元気になれる、

ある意味エナジードリンクのような本で定期的に読み返したくなります。

柚木麻子さんの子育ての記録inコロナ禍です。

そこかしこにほとばしる怒り。

この怒りを行間に詰めて文章に昇華できるのが、さすが「アッコちゃん」の作者だなと読みながら思います。

 

そんな中でおそらく著者からしたら見当はずれの、私が怒りを感じたエピソードが次の内容。

母乳で育てている子どものために、なんと私が卵と乳製品を完全に断たねばならなくなった。

おそらくアレルギー絡みで医師から食事指導を受けて卵と乳製品を除去することになったんでしょう。

この後ご友人にセカンドオピニオンをすすめられて、別の病院では再開してもいい、そもそも断つ必要がなかったと診断されたというエピソード。

ただセカンドオピニオンを受けるまでの間には年末年始、節分を挟んでいる。

クリスマスケーキなし、おせちなし、恵方巻なし、仕事中のカフェラテもなし。

チョコレートには乳化剤が入っているので避けたとのこと。

乳化剤は除去する必要ないでしょ!と思ったけど最近は乳由来のものもあるのね。

臨床:牛乳アレルギーで注意すべき乳化剤がある?:DI Online

 

類似の話を別の本でも見たことがと思ったらコンドウアキさんのコミックエッセイ。

2011年発行の「トリペト2 オカアチャン1年生」で、生後5か月の長女トリペちゃんにかゆかゆが出て、

「お母さん卵たべる?」「マヨネーズは?」「プリンは?」と医師に聞かれ、

プリンを食べたということで卵除去、イクラとか魚卵もダメという指導をされる。

あとがきで、「四六時中卵のことを考えてました。当時は授乳中の私も完全除去ということだったので…卵に寝不足に、仕事完全復帰で保育園に…と精神的に非常にまいっていた時期です。せっかくカワイイ時期だったのに、惜しいことをした…」とあります。

 

それから3年後の設定の「トリペト6 てんてこしまい」では次女のモッチンに赤い発疹が出たということで病院では卵に陽性反応が出るも、

「本人は1歳まで除去」「お母さんは卵除去しなくていいよ」と言われて、3年前のトリペのときの完全除去とは方法が変わっていてヨカッタ…というくだりがある。

この本は2016年発行で、コメントに「それからまた6年たってますので変わってると思います」とのコメントがあるのでおそらくこれは2010年ごろの話。

 

しかし冒頭の柚木さんのエッセイは2018年の話のようです。

 

食物アレルギー診療ガイドライン2021には次の文言が明記されている。

小児期の食物アレルギーの発症予防のため、妊娠中や授乳中に母親が特定の食物を除去することは、効果が否定されている上に母親の栄養状態に対して有害であり、推奨されない。

アレルギーガイドライン2021 ダイジェスト版 第6章 リスク因子と予防

 

いつからこの記載はあるんだろう?と過去のガイドラインをさかのぼってみたところ、

食物アレルギー診療の手引き2005に以下の記載がありました。

妊娠中・授乳中にアレルギー性疾患発症予防のために食物制限を行うことは十分な根拠がないために通常勧められていない。

https://www.foodallergy.jp/wp-content/themes/foodallergy/pdf/manual2005.pdf

 

ガイドラインに従わなければいけないわけではないのは百も承知です。

ただ、ガイドラインから外れる場合はなぜその治療をするのか、根拠を示してほしいし説明してほしい。

これらのエピソードのような、非常に大きな負担を強いるのならばなおさら。

きっと柚木さんにしろコンドウアキさんにしろ、その説明はほとんどされないまま、苦しい日々を過ごしたんじゃないかと想像します。

医療従事者の言葉が患者さんには呪いとなりかねないことを自覚しなければならない、と自戒を込めて強く感じたエピソードでした。

 

それはそうとコンドウアキさんのトリペとシリーズは子育て中の方にとてもおすすめ。

リラックマの産みの親です。

 

 

人生の折り返し地点からの「体力アップ1年生」

 

 

 

私がずっと追いかけているコミックエッセイ作家さん、たかぎなおこさんの新刊です。

ちょうど一人暮らしを始めたときに「ひとりぐらしも5年め」に出会い、

そろそろ一人旅でも…と思ったタイミングでひとりたびシリーズが出てハマり、

結婚してしばらくした頃にマラソンシリーズが出て、

夫は東京マラソンにふらっと応募して当選、

私も真似してハーフマラソンに出てみたりしました。

この20年ほど、不思議なほど私の「やってみたいな」のタイミングでドンピシャのシリーズが始まる作家さんです。

ちなみに身長150cm前後なのも共通項。

 

たかぎさんはこの本の中では47歳。

出産後体重が戻らない&疲れやすいという悩みを抱えて、

いやいやまだ老け込むには早いでしょ!と一念発起、

シャキシャキの元気人間を目指すという内容です。

これまた私のスペックにぴったりで…過去最高体重記録中の私…

どんだけシンクロしてるんだよ!

 

40過ぎるとそろそろ人生も折り返しが見えてくるわけで、

子育てが落ち着いたら、定年退職したら、

その時の自分は何をしてどうやって生きてるんだろう?というのを最近考えたりします。

膝が痛いとか腰が痛いとか疲れたとか言いながら家にこもるのか。

以前整形外科のDrの講演で、女性は寿命は長いのだけれども、その長い寿命のうち健康寿命をどれだけ延ばせるかが課題であるということを聞きました。

女性に多い変形性膝関節症などによって歩行に支障が出ると急にQOLが下がってしまうと。

いつまでも自分で歩いて、自分の行きたいところに自分で行きたい。

40過ぎるとやせたいとかそういうのはもちろん、生きていくために運動しなければと思います。

 

しかし。

 

運動が続かないのですよ。

やらなきゃいけないのは分かってるし、やりたいのに時間がなかったり、

他にやらなきゃいけないことがたくさんだったり。

やる前になぜか疲れてるし。

 

この本でもたかぎさん&相棒のかとうさんが「何をするか」「どうやって続けるか」を試行錯誤されてます。

「何をするか」は人それぞれだと思うのですが、

「どうやって続けるか」のポイントはこの本に出てくる「約束」と「発表会」かなと感じました。

 

「約束」に関しては「自分ひとりだとどうしてもさぼっちゃったりするけど誰かと運動の約束してるとさぼれないでしょ」の言葉があります。

友達とか仲間とかと報告しあったりして逃げられない環境を作る。

 

「発表会」はこの本ではマラソン大会が設定されてます。

 

私は「約束」に関しては「みんチャレ」というアプリで見ず知らずの人と5人チームを作って体重を毎朝報告しあっております。

足りないのは「発表会」だったのかも。

何かマラソン大会とかイベントに参加してみようかな?

 

今回またしても、たかぎさんに「きっかけ」をもらえた気がします。

 

なぜ学校でジャガイモ食中毒が起こるのか?「植物はなぜ毒があるのか」

 

 

白状すると、本来読みたかったのはタイトルが類似した別の書籍でした。

でもこれはこれで、読んでよかった。

 

私の子供のころの愛読書は家の本棚にあった「毒のある植物」という文庫本でした。

今から思えばあの本が化学物質や毒、植物に興味をもったきっかけだったのかもしれません。

薬学部に入ったあとも一番好きな授業は薬用植物学でした。

 

さてこの本、以下の6章から構成されています。

「第1章 注意!有毒物質をもつ身近な植物」

「第2章 人間以外の生き物に毒になる物質」

「第3章 毒が薬にも!植物から生まれたお薬」

「第4章 上手に摂ると役に立ってくれる植物たち」

「第5章 薬の効果を無効にしてしまう植物」

「第6章 長寿と植物」

 

なかでも読みごたえがあるのはやはり第1章。

特にジャガイモへの力の入れようがすごい。

 

ジャガイモの芽の部分に有毒な物質があるというのはよくご存じかと思います。

では、なぜジャガイモの食中毒事件の9割は家庭ではなく「学校菜園」で起こっているのか?

なぜ学校菜園で栽培されたジャガイモは有毒な物質を作るのか?

ジャガイモの有毒成分のソラニンってそもそもどんな薬理作用なのか?

毒を作らなくさせることはできるのか?

…と栽培の手順も含めて、熱く語りかけてくれます。

 

この熱量をもってほかの植物のことも語るのかと思いきや、ジャガイモ以外は意外とあっさりな説明です。

しかしジャガイモだけでもこの本を読む価値はある。

そう思わせてくれるジャガイモに関する冒頭の17ページです。

 

後半の薬に絡む部分は薬剤師の観点からするとあと一息物足りない気もするんだけど、

個人的に衝撃を受けたのが「グレープフルーツの消費が著しく減少している」の記載でした。

「若い人にはこの果物の名前さえ知られていないこともある」ってマジで?!

それは…昨年の薬剤師の国試に「スウィーティー」が出てきて皆さんが「知らねえよ!」ってぼやいてたわけですね…

グレープフルーツさえ未知の食べ物ならば…

グレープフルーツ、特にホワイトが大好きな私は寂しいです。

ふと気づけばスーパーでもグレープフルーツ売ってない?売っててもルビーばかり?!

GFJであればトロピカーナがほろ苦さが強くて好きです。