正しいとか正しくないとか「校閲記者も迷う日本語表現」

 

「とんでもございません」

この言葉、私が社会人になったころは間違い、

正しくは「とんでもないです」もしくは「とんでもないことです」ですよ、

と注意されました。

その後文化庁の「敬語の指針」で、

限られた状況においては「とんでもございません」が認められるようになり、

現在ではマナー講座などにおいても「とんでもございません」は

スルーされることが多いように思います。

(むしろ最近では「とんでもないことです」は儀礼的すぎて違和感があるって講師に言われたことがあります)

 

この本は言葉の海の中でお仕事されている校閲記者さんのお仕事本ですが、

迷いやその理由がありありと書かれていて読み物としておもしろいです。

例えば

「蛇口はどうやって数える?『個』?『本』?」とか、

「エンジンは『吹かす』のか『噴かす』のか」、

「『3000人台を突破』って何人になったということか」、

「『ほぼ』と『ほぼほぼ』はどう違うのか」、

「『一両日』は『今日か明日』なのか『明日か明後日』なのか」

など。

 

辞書によっても解釈が違ったり、

日本語として正解の表現であっても一般市民の認識が違ったりして、

「これが新聞記事として適切」というのが明確でないのですね。

 

「言葉は生き物」と言われる通り、

使われ方やその意味するところは移り変わっていくので、

自分が正しいと思って使っている言葉遣いが

相手にこちらの意図する通り伝わっているかは常に意識すべきと思います。

 

以前、「口腔内崩壊錠」という言葉を見た患者さんが

「口が崩れる怖い薬」と思い込んでいたということがありました。

驚いたのは、何かのアンケート結果で

上記の思い込みをしている患者さんが決して少なくはなかったということ。

自分は何気なく使っていた言葉が、

患者さんにとっては恐怖の言葉になっていたということを

改めて認識させられるエピソードでした。

 

ところでこの本で一番びっくりしたのが、

「予想の斜め上をいく」のような「斜め上」の表現、

元ネタは冨樫義博氏の「レベルE」だそうですよ。

2022年1月刊行の三省堂国語辞典第8版にも収録されたそうです。

冨樫義博、すごっ!

どんな場面が元ネタになったのかも紹介されてますのでぜひご確認ください。

 

毎日新聞校閲センターの本は「校閲記者の目」もおすすめです。

「斉」と「斎」は別の字 「校閲記者の目」 - 薬剤師がマインドマップ風に読んでみた