きっとどこかで役に立つ「くすりに携わるなら知っておきたい!医薬品の化学」

本の紹介

●くすりに携わるすべての人に役立つ本!
●くすりの“なぜ?”を有機化学で解き明かす!
 
月刊誌『PHARM TECH JAPAN』で4年間にわたり連載された好評企画をまとめた本書は、2019年12月に初版が発行され、医薬品にまつわるさまざまな現象の謎を有機化学の視点から解明する指南書として多くの読者に親しまれてきました。
第2版では、初版発行から3年間のうちに上市された特徴的な新薬のトピックを取り上げるとともに、コロナ禍における医薬品開発として、COVID-19の治療薬およびワクチン類の開発事例も盛り込み、それらによって医薬品業界がどのように変化したのかについても解説しています。また、有機触媒、生体直行型反応がノーベル化学賞の受賞対象となったことから、その関連記事も追加しました。好評だった初版からさらにパワーアップした第2版も、くすりに携わるすべての人にとって必携の1冊です。

じほう社HPより引用

医薬品の化学 第2版|株式会社 じほう

目次

第Ⅰ部 医薬品を支える有機化学

 第1章 ココがわかれば有機化学は簡単!

 第2章 有機化学は役に立つ!

第Ⅱ部 創薬を目指す医薬品化学

 第1章 知っておきたい!医薬品化学の基礎

 第2章 医薬品はサイエンスの結晶

第Ⅲ部 最近の創薬に思う

 第1章 新薬と創薬の話題

 第2章 創薬を取り巻く環境

こんな人におすすめ

有機化学なんて国家試験以来ご無沙汰してるという方

薬剤師の仕事で有機化学なんてあんまり役に立たないんじゃない?と思ってる方

感想

正直、国家試験以来、有機化学なんてまともに触れたことがありません。

構造式くらいは業務の中で見るし、

例えば配合変化を考えるときにちょっと有機化学にかすったりはするけど、

例えばグリニャール反応だのディールス・アルダー反応だの細かく覚えてなくても

なんとなく乗り切ってしまってました。

 

そんなところに、

「くすりに携わるなら知っておきたい」と銘打つこの本。

読むしかないですよね。

 

第Ⅰ部は有機化学の復習です。

有機化学の勉強が20年ぶりでも大丈夫。

酸・塩基の話から始まるのですんなり読み進めていけます。

ただこの時点では臨床にいたらあまり関係ないかなという思いは捨てきれない。

 

第Ⅱ部になると、具体的な医薬品名で説明が始まります。

ちょっと興味が出てくる。

PPIアスピリン、5-FUの薬理作用が構造式で説明されます。

薬理の教科書とはちょっと違う切り口でおもしろい。

セチリジンとレボセチリジン、みたいなキラルスイッチにも触れられてます。

確かにキラルスイッチは有機化学の領域ですね。

個人的にはこの章の「添加剤を構造式で考える」がとても興味深かったです。

なぜ添加物にはセルロース誘導体が多いのか。その答えがあります。

 

第Ⅲ部は最近の創薬にからめた有機化学の話。

抗体からADC、CAR-TからCOVID-19治療薬のパキロビッドまで、

幅広くカバーされてます。

有機化学専門の著者の先生のはずなのにカバーする範囲が広い!

最近承認される新薬は抗体医薬品ばかりという印象ですが、

その中で低分子創薬への思いが記載されています。

 

この本を読んで、一見関係のなさそうなことでも根っこは「薬」でつながっている、

という薬学という分野の面白さを改めて認識させられたように思います。

今目の前の仕事には結びつかないかもしれないけれど、

きっとどこかで生きてくる。

かわいらしい表紙なのに中身はがっつり質実剛健、の

じほう社さんらしい本です。

 

よければこちらもどうぞ

・「ファルマシア」56巻7号(2020年)に初版の書評が掲載されてました。

くすりに携わるなら知っておきたい!

 

有機化学つながりでこちらの本も併せて読むのがおすすめ。

ポピドン?ポビドン?「薬の名前には意味がある」 - 薬剤師がマインドマップ風に読んでみた