薬剤師と校正者の仕事は似ている「文にあたる」

本のそでから

<本を読む仕事>という天職に出会って10年と少し。無類の本読みでもある校正者・牟田都子は、今日も校正ゲラをくり返し読み込み、書店や図書館をぐるぐる巡り、丹念に資料と向き合う。1冊の本ができあがるまでに大きな役割を担う校正・校閲の仕事とは? 知られざる校正者の本の読み方、つきあい方。

目次

  1. 赤鉛筆ではなく鉛筆で
  2. 常に失敗している仕事
  3. 探し続ける日々

こんな人におすすめ

文章やことば、本づくりに興味のある方

「何も起こらない」が100点であることを周囲に理解してもらえないという悩みがある方

感想

校正という仕事は、薬剤師の業務に近い部分があるのではないかと常々思っています。

 

この本の中で、校正の仕事について次のような表現があります。

校正は減点方式の仕事だといわれます。

新聞の校閲記者は「サッカーに例えるとゴールキーパー」と表現しています。

「『0点に抑える』ことが至上命令」で、「99回横っ跳びでスーパーセーブをしようとも、たった1本シュートを入れられたら、キーパーにとっては『負け』」なのだと。

薬剤師の仕事も、業種によって異なるとは思いますが

「『事故』が起こらないこと」が100点、

という場面は往々にしてあるのではないでしょうか。

何事も起こらないように、水面下ではけっこうバタバタしているのですが、

表面上は何事も起こらないので、

あまり詳しくない方々からは「いなくても大丈夫じゃない?」とか言われてしまう。

私のかつて所属していた企業では

半期ごとに業績考課でA~Eの5段階で評価がされましたが、

「『事故』が起こらない」は真ん中の「C」で設定されるので、

100点と思える仕事をしても業績「C」にしかならない。

それ以上の「A」とか一体どういう仕事をすればいいんだよ!と思いました。

…グチになってしまったので本の内容に戻ります。

 

この本は本づくりにおける縁の下の力持ちである校正者さんが書いた本です。

校正をするうえでの悩みや心がけていることが赤裸々に、かつ淡々と書かれています。

 

日本語の表現に絶対の正解があるわけではなく、

正解とされている表現も日々変わっていくなかで、

悩みつつ校正をされている様子が伝わってきます。

指示ではなく、注意喚起。

私の日々の業務にも通じる内容です。

校正に思い入れの無い方もすんなりと読めると思います。

 

他の方が書かれた文章を引用して、そこから話題を広げていくという章が多くて、

校正に関してこんな本も出てるのか!

こんな作家さんが校正について文章の中で発現してたのか!

という校正に関するブックリストとしても使えます。

読みたい本がどんどん増えて困ります。

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